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皆さんこんにちは!
有限会社お茶の山佐園の更新担当の中西です!
山佐園の茶話~part12~
ということで、お茶農家が行う茶畑育成の一年と技術について、初心者にも分かりやすく、かつ専門性を持って深く解説します。
日本茶の味と香り、その背後には「茶畑」という舞台があり、そしてそれを支えるお茶農家の緻密な育成作業があります。
一芯二葉(いっしんによう)この言葉は、最も美味しい新芽の摘み方を示す茶業の専門用語であり、お茶づくりの象徴とも言える言葉です。
茶畑の管理は、一年を通じて行う“総合技術”です。単に苗を植え、収穫するだけではなく、土壌、気候、病害虫、光、風――あらゆる自然の要素を読み解き、共に歩む農業。
お茶は水はけが良く、酸性土壌を好む作物。標高や日照、傾斜の条件も茶園づくりに影響します。
理想pH:4.5~5.5
標高:200〜600mが香りの良い茶を作る傾向
傾斜地は寒暖差が大きく、旨味成分(テアニン)を高めやすい
茶畑は「棚式」「畝立て式」「平坦地式」など地形に応じた方式で造成されます。
日本には100種以上の茶品種がありますが、代表的なのは以下の通り
品種 | 特徴 |
---|---|
やぶきた | 全国の約7割、バランス型 |
さえみどり | 鮮やかな緑、旨味が強く高級茶向け |
あさつゆ | 玉露風のまろやかさ、被覆栽培に最適 |
→ 土地の気候、収穫時期の分散、加工目的によって複数品種を組み合わせるのが一般的です。
茶畑管理は、1年中休むことのない仕事です。
深刈り・中刈り・浅刈り:樹高を調整し、新芽の発育を整える
病気や害虫の越冬を防ぐための除草と掃除
土壌改良(苦土石灰、堆肥、緑肥のすき込み)
根に働きかける基肥(元肥)の投入
茶の木のエネルギーを蓄えるための寒肥
雪や霜の被害を防ぐための風よけネットの設置も
萌芽(ほうが)開始を確認し、被覆栽培(かぶせ茶)など品質向上技術を施す
害虫対策(チャノキイロアザミウマ、チャノホコリダニ)
一芯二葉の若芽を手摘み or 機械摘み
2番茶の収穫(1番茶より品質は下がるが量産型)
高温多湿での病気(炭そ病、赤焼病)対策
雑草管理と枝葉の切り戻し(通気性と採光確保)
お茶は、他作物よりも窒素要求量が高く、これが旨味や香りに直結します。
タイプ | 目的 | 備考 |
---|---|---|
基肥(元肥) | 春先の萌芽を支える | 有機+化成の併用が多い |
追肥 | 生育の途中で施す | 被覆栽培時には特に重要 |
寒肥 | 冬に根を育てる | 骨粉や油かす、堆肥が中心 |
pH・EC値・窒素、リン酸、カリウムなどのバランスを年1回以上分析
足りない成分だけを的確に補う「精密施肥」
チャノホコリダニ:新芽を変形させる
チャノキイロアザミウマ:若葉の表面を食害
赤焼病・炭そ病:葉が茶色く枯れる
→ 生物農薬・BT剤・フェロモントラップ・天敵利用など、減農薬型のIPM(総合防除)が注目されています。
遅霜:新芽の全滅リスク(送風機や防霜ファンを使用)
台風:棚式茶園の倒壊対策が必須
高温障害:夏場の根焼けや日焼けを防ぐ「マルチ被覆」
土壌水分センサー+スマホ連携 → 水管理の省力化
ドローンによる空撮モニタリング → 病害の早期発見
茶葉生育AI診断 → 摘採タイミングの見極め
また、スマートファーム化により、高齢農家の負担軽減や若手参入の促進も期待されています。
お茶農家による茶畑育成は、
技術(栽培管理)
× 感性(季節の読みと自然との対話)
× 継承(地域の文化と知恵)
この三位一体で成り立っています。
特に気候変動や市場変化が激しい今、土づくりと丁寧な育成こそが、茶の品質と農家の持続可能性を支える基盤です。
皆さんこんにちは!
有限会社お茶の山佐園の更新担当の中西です!
山佐園の茶話~part11~
ということで、その実態と背景、今後に向けた課題と希望の兆しを、深く探っていきます。
「日本の風景」と聞いて思い浮かぶもののひとつ、茶畑の広がる景色。しかし今、その美しい風景が徐々に失われつつあります。
お茶農家の人手不足と茶畑の荒廃化は、静かに、しかし確実に進行している地域課題です。
かつて日本の各地で栽培され、文化・嗜好・経済を支えてきた「お茶」は、今まさに存続の危機に直面しています。
農林水産省の統計によれば、日本国内の茶生産農家のうち、65歳以上の割合は6割以上。若い後継者が不足し、廃業する茶農家が年々増加しています。
年 | 茶農家数 | 備考 |
---|---|---|
1990年 | 約9万戸 | ピーク時 |
2020年 | 約1万5千戸 | 約85%減少 |
中山間地域や過疎地に多い茶農家では、「人を雇う余裕がない」「機械化が進まない」などの理由で、人手の確保が非常に困難な状況です。
管理ができなくなった茶畑は、雑草や灌木に覆われ、次第に原野へと戻っていきます。こうした放棄茶園の面積は、静岡・鹿児島・京都など主要産地でも拡大中です。
特に問題となるのが以下の点
周辺農園への害虫・病気の拡散リスク
美観の低下と観光資源の劣化
地滑りなどの防災リスク増加
土地としての価値の下落
茶畑は“常緑樹の畑”という特殊な農地であり、他の作物への転用も難しいため、再利用されず荒れ地になるケースが多いのが現状です。
ペットボトル飲料の普及
ラテやコーヒー文化の浸透
急須でお茶を淹れる文化の希薄化
結果として、家庭用茶葉の需要が大幅に減少し、茶の市場価格は長年にわたり低迷。
例:1kgあたりの茶葉卸価格が、10年で約30〜50%下落という産地も存在します。
茶葉の収穫ロボット(AI搭載)
ドローンによる生育・病害モニタリング
作業記録のデジタル管理(茶園台帳アプリ)
導入コストやITスキルの壁はあるものの、高齢農家でも扱いやすい機器の開発が進められています。
地元中高生やボランティアによる収穫体験
NPOと連携した「放棄茶園再生プロジェクト」
地域おこし協力隊・都市部からの移住支援制度の活用
成功事例
静岡県川根町では、荒廃茶園を若手農家と学生が共同再生し、新ブランド「川根未来茶」を立ち上げ
「玉露」「抹茶」「有機茶」など付加価値をつけた製品開発
農家自らが加工・販売・カフェ運営まで担う例も
SNS・ネット通販を活用したダイレクトマーケティング
お茶農家の問題は、生産者だけでは解決できません。私たち消費者一人ひとりの選択が、茶産地の未来に直結します。
✅ できること
急須でお茶を淹れてみる
地元産やオーガニック茶を選ぶ
茶農家直送のネットショップを応援する
茶摘みイベントに参加して現場の声を知る
日本の茶畑は、ただの農地ではありません。それは 日本文化・地域の誇り・人の手で紡がれた伝統の象徴です。
しかし、その風景がいま、音もなく崩れはじめています。
この問題は、農業の構造変化、高齢化、消費文化の変化という、社会全体の縮図でもあります。
だからこそ
お茶農家と私たち消費者、行政、地域が一体となって支え合い、次の世代へと継承していくことが必要不可欠です。