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月別アーカイブ: 2025年7月

山佐園の茶話~part18~

皆さんこんにちは!
有限会社お茶の山佐園の更新担当の中西です!

 

 

山佐園の茶話~part18~

 

 

日本の茶文化は長い歴史を持ち、今なお私たちの暮らしに根付いています。その背景には、四季折々の自然と向き合いながら、丁寧に茶葉を育ててきたお茶農家の存在があります。しかし、彼らの果たしている役割は「茶を育てる」だけではありません。お茶農家は、地域経済を支え、雇用を創出し、地域ブランドを形作る「経済的プレイヤー」としての顔も持っているのです。


1. 地場産業としての経済的基盤

お茶の生産は、農村部において重要な基幹産業の一つです。とくに静岡、鹿児島、京都、三重などでは、茶業が地域経済の中核を担っており、生産・加工・流通・販売に関わる産業全体が一つの経済圏を形成しています。

  • 年間収入の柱となる生産農家の存在

  • 加工場や機械メーカー、資材業者などの関連産業への波及

  • 地域自治体の税収・補助金活用にも寄与

このように、お茶農家は一地域の「経済基盤」の一部を形成する不可欠な存在です。


2. 雇用創出と労働機会の提供

お茶農家では、収穫期や加工期に多くの人手が必要とされるため、地域におけるパート雇用・短期就労の機会を生み出しています。高齢者や主婦層、学生など、多様な層が関わることができ、地域の生活と経済に潤いを与えています。

また、6次産業化を進める農家では、製造・販売スタッフ、観光ガイド、カフェ運営など、農業以外の職域も生まれており、地元の若者や移住者の雇用の場としても注目されています。


3. ブランド価値による地域振興

地域独自の気候や品種、製法を活かした「ブランド茶」の存在は、地域の経済力を高める武器になります。

  • 宇治茶、八女茶、知覧茶、狭山茶などのブランドが高価格帯を維持

  • 高品質・無農薬・オーガニックなどの付加価値が、国内外市場で評価

  • 観光商品(お土産・体験・カフェ)としての経済波及効果

こうしたブランド力は、観光客誘致や移住促進にもつながり、経済的効果はお茶農家にとどまらず、地域全体に波及します。


4. 新市場・輸出の開拓による外貨獲得

日本茶の輸出量は近年増加傾向にあり、特に北米・欧州・アジアで健康志向の高まりとともに需要が拡大しています。

  • 抹茶やほうじ茶が人気商品に

  • 輸出による外貨獲得と農家の収益多様化

  • 輸出に適した生産体制整備や認証取得が新たな経済活動を喚起

このようなグローバル展開も、お茶農家の経済的役割を国際レベルで拡張しています。


5. 地域再生の核としての期待

お茶農家は単なる生産者ではなく、「地域を再生させる主体」としての可能性を秘めています。茶畑を中心としたエコツーリズム、里山保全活動、福祉連携など、社会的意義と経済的価値の両立が実現可能な分野として注目されつつあります。

  • 茶農家×観光=持続可能な観光経済

  • 茶農家×福祉=地域福祉の新しいモデル

  • 茶農家×教育=地域学習の場としての茶畑


お茶は文化であり、経済である

私たちが日々楽しむ一杯のお茶。その背後には、お茶農家の労働と工夫、そして地域経済を支える静かで確かな営みがあります。

お茶農家の経済的役割は、「地方創生」のキーワードそのものです。今こそ、農業を支える視点から、地域経済を見直すことが求められているのかもしれません。

 

山佐園の茶話~part17~

皆さんこんにちは!
有限会社お茶の山佐園の更新担当の中西です!

 

 

山佐園の茶話~part17~

ということで、お茶農家における「多様化」の現在と可能性を、事例とともに深く探ります。

 

かつて「お茶農家」といえば、収穫から加工・販売までを一貫して行う専業農家が中心でした。しかし今、その姿は大きく変わりつつあります。気候変動、消費者の嗜好変化、流通の変化など、さまざまな要因に対応するため、お茶農家は生産のみにとどまらず、多様な形で事業の幅を広げ始めています。


1. 生産品目の多様化:茶葉以外の作物・加工品への展開

少子高齢化や茶の消費量減少を背景に、お茶農家の多くが「茶以外の作物栽培」や「茶加工品開発」に取り組んでいます。

  • 例:柚子や梅などの果樹栽培との兼業
    同じ山間地で育つ作物を組み合わせることで、季節ごとの収益バランスを取る工夫が見られます。

  • 例:紅茶やフレーバーティーの製造
    伝統的な緑茶だけでなく、紅茶やほうじ茶、ハーブとブレンドしたオリジナルティーを製造することで、新しい顧客層を獲得しています。


2. 販売チャネルの多様化:直接販売とオンライン化

かつては市場や卸に出荷するのが主流だった茶農家も、近年では「6次産業化」により、自らブランドを立ち上げ、加工・販売まで行う例が増えています。

  • オンライン販売の充実
    SNSを活用して全国の消費者とつながり、自社ECサイトや通販プラットフォームを通じてダイレクトに販売。

  • サブスクリプション形式の導入
    月替りでお茶を届ける「定期便」は、顧客との継続的な関係を生み、収益の安定にもつながります。


3. 茶畑を「観光資源」として活用

茶畑の美しさや茶作り体験を活かし、観光や教育の分野へ進出する動きもあります。

  • グリーンツーリズムの受け入れ
    茶摘み体験や手揉み体験、テラスカフェの併設など、訪れる人に「体験」と「物語」を提供する農園が増えています。

  • 外国人観光客向けツアー
    海外からの観光客にとって、日本茶文化は魅力的な体験価値。英語対応や農家民泊との連携も進んでいます。


4. 地域との連携による社会的価値の創出

お茶農家の多様化は、地域の福祉や教育、環境保全とも連動しています。

  • 障がい者の就労支援との連携
    茶摘みや袋詰め作業などを通じ、地域福祉との協働が行われています。

  • 里山保全活動としての茶栽培
    茶畑の維持は、斜面崩壊の防止や生物多様性の確保にも貢献しており、環境保全型農業としての意義も見直されています。


茶の可能性は、暮らしの中に広がる

「お茶農家の多様化」とは、単に副業を持つことではありません。それは、自分たちの土地、文化、技術を多角的に活かし、変化に対応する柔軟な姿勢の表れです。お茶はもはや飲み物だけではなく、人を集め、体験を提供し、地域と未来をつなぐ存在になりつつあります。

お茶農家が生み出すのは、「一杯のお茶」だけではなく、「新しい暮らしのかたち」なのです。