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月別アーカイブ: 2025年10月

山佐園の茶話~part24~

皆さんこんにちは!
有限会社お茶の山佐園の更新担当の中西です!

 

 

山佐園の茶話~part24~

 

「選ばれ続ける」ためのブランド・商品・体験・環境・人の話。価格競争ではなく、価値競争へ。6次化(加工)×観光×デジタルを組み合わせ、ファンと一緒に育つ茶園を目指しましょう。


1|ブランドは“畑のストーリー×科学の裏付け”から生まれる

  • ストーリー軸:品種の来歴、標高、朝霧、被覆、家族の役割。

  • 科学の裏付けアミノ酸・カテキン・カフェイン等の簡易分析(外注OK)→味覚の理由を数値で示す。

  • 写真と言葉茶畑の陰影・雲海・露を切り取る。コピーは五感+具体で。「湯冷まし50℃、とろり甘旨」


2|商品設計:ポートフォリオで“負けない”棚をつくる

  • フラッグシップ:単一畑・単一品種・年ごとにロット番号。限定性でファン化。

  • デイリー:ブレンドで味の安定を提供。定期便の軸に。

  • 体験型水出しボトルキットラテベース茶スイーツ素材(抹茶・粉末ほうじ茶)。

  • ギフト季節しおり・淹れ方カード・ペアリング案を同梱で“説明いらず”。


3|パッケージ:3秒で「買う理由」を伝える ️

  • 正面:品種/火入れ強弱/旨・渋・香のレーダー。

  • 側面:抽出レシピ(温度・時間・湯量・二煎目)。

  • 背面:畑座標・標高・収穫期・被覆の有無・ロットQR。

  • 素材アルミ蒸着+チャックで鮮度キープ。30g/80g/200gの使い切り設計。


4|6次化:小ロットでも“プロの味”に近づく設備・運用 ⚙️

  • 小型焙煎機×二段火:低温で甘香→仕上げに高温で香り立ち。

  • 真空パック・脱酸素剤:火入れ後の酸化スパイクを抑える。

  • 粉末化:**微粒粉砕(超微粉)**は耐湿管理が命。シリカゲル+窒素置換で固結回避。

  • 委託加工を賢く併用:品質基準とロット管理を明記したSLAを締結


5|観光×体験:畑を“最高のテーマパーク”にする

  • 新茶手摘み体験(5月):摘んで→蒸して→手揉み→試飲。オリジナル缶に封入してお土産へ。

  • 朝もや茶会:日の出&雲海×一煎。写真コンテンツとしても最強

  • 焙煎ワークショップ:自分の火入れでマイブレンドづくり。

  • カフェ併設茶プリン・ほうじラテ・抹茶ソフトで客単価UP

安全配慮:刈払機・蒸し釜周辺は立入線保険熱中症対策を徹底


6|コミュニティ:ファンが“第二のスタッフ”になる仕掛け

  • オンライン茶会:月1回、同じロットを飲みながら味を言語化。

  • 茶畑オーナー制度:名前入り札&収穫ボーナス。農繁期ボランティア受け入れで人手も確保。

  • レビューの可視化:悪い声も改善実績とセットで公開=信頼貯金


7|BtoB:飲食店・菓子工房との“共創レシピ”

  • お菓子屋さん抹茶/ほうじ粉末の粒度・香気を試作セットで提案。

  • カフェ水出し濃縮×ソーダほうじ×ミルクフォームのドリンク開発。

  • 酒蔵緑茶酒・ほうじ茶梅酒でコラボ。季節限定はSNSで拡散しやすい


8|サステナブル:環境値を“語れる数字”に

  • 被覆資材の再利用率ボイラ燃料の切替(LP→電化/木質)製品当たりCO₂を開示。

  • 生物多様性:畦の草花ベルトで天敵昆虫を呼ぶ。フェロモントラップで農薬低減。

  • 雨水利用・太陽光水出しラインのチラー電力を再エネに。

  • 茶殻アップサイクル消臭材・コンポスト・染色に活用♻️


9|リスクと向き合う:気象・病害・人の課題に“仕組み”で挑む ️

  • 猛暑&少雨点滴灌水+マルチングで葉温を下げ、苦渋みの暴発を抑制。

  • 春の遅霜防霜ファン+散水氷結の複合。SMS一斉アラートで緊急招集

  • 炭疽病・輪斑病風通し(剪枝)と発病葉の早期除去

  • 人材マニュアル動画化技能マトリクスで“属人化”を溶かす。繁忙期は地域×学生バイトのハイブリッド。


10|ECと実店舗:両輪で伸ばす販売運用

  • EC定期便(毎月/隔月)季節限定送料無料ラインレビュー特典

  • 実店舗試飲→即決の導線。0.5g×3種の飲み比べで「違いがわかる」を演出。

  • 同梱物淹れ方カード・ペアリング表・畑だよりで“箱を開けた瞬間から茶会”。

  • 写真:逆光で透ける茶葉、注ぎ初めの“黄金の糸”。光の演出が命


11|数字で回す経営:小さなKPIで大きく変わる

  • 歩留まり(荒茶→仕上げ%)、再焙煎率返品率鮮度在庫日数定期便継続率

  • イベントKPI:体験参加→EC登録→2ヶ月後購入の転換率

  • CXスコア「また買う/人に勧めたい」をアンケで数値化。改善はひとつずつ


12|ケーススタディ:標高450mの小規模園が年商1.6倍に

  • 打ち手:単一畑ロット化/火入れ二段化/水出しキット化/朝もや茶会/CO₂表示。

  • 結果:定期便継続率**+18pt**、ギフト客単価**+27%、来園→EC登録+42%**。

  • 学び体験→言語化→データの循環がブランドを強くする。


13|まとめ

小さな茶園でも、大きな物語を育てられます。鍵は、畑のリアル科学の言葉体験の楽しさ環境の誠実さを一本に束ねること。今日の一歩は、製品ラベルに“抽出レシピ&ロットQR”を足すだけでもOK。あなたのお茶は、きっともっと“語られる味”になります。

 

山佐園の茶話~part23~

皆さんこんにちは!
有限会社お茶の山佐園の更新担当の中西です!

 

 

山佐園の茶話~part23~

 

茶樹の声に耳を澄まし、天気と対話し、工程を科学する。そんな“丁寧な当たり前”の積み重ねが、湯飲み一杯の感動に変わります。今日は、圃場管理→摘採→製茶→仕上げ→販売まで、一気通貫の“勝ち筋”を解説します。✨


1|圃場の設計は味を決める「最初のブレンド」️️

  • 園地の向き(アスペクト):東向きは朝露が早く乾き病気リスク低減。北風の当たり具合で芽伸びが変わる。

  • 土作り:pH5.0〜5.6目安。**完熟堆肥+有機質(菜種粕・魚粉)**で団粒構造を育て、**根の“呼吸”**を守る。EC(電気伝導度)で施肥過多を見える化

  • 品種設計:早生(やぶきた)×中生(おくみどり)×晩生(さえあかり)でリスクと収穫負荷を分散。被覆適性萎凋向きもあらかじめ想定。

  • かん水・排水:極端な乾燥は旨味(アミノ酸)↓、過湿は根痛み→黄化。点滴チューブ+土壌水分センサーで「与えすぎない勇気」

ミニTIP:苗の定植は南北畝で光を均等に。終日西日の強い畝は被覆ネットで葉温を抑え、渋みの暴発を防ぐ️


2|冬〜早春の仕込み:剪定・整枝・被覆で“芽のリズム”を整える ✂️

  • 剪定:深刈りは更新、浅刈りは収量維持。2〜3年の設計でローテーション。

  • 整枝:摘採面をフラットに保つ=均一蒸しの土台。波打ちは粉砕・粉がれの原因。

  • 被覆(玉露・かぶせ茶):遮光率・期間で旨味の伸びが変わる。直掛け→本簾へ段階的に。葉色・香の“変調”を観察


3|摘採:風味のゴールは畑で決まる ✨

  • 基準:一芯二葉(早取りは旨味↑・香り繊細/遅取りは香り濃いが渋味↑)。

  • 時間帯朝露が切れてから。露付きは蒸しムラ&粉砕の元。

  • 機械設定:回転数・刃当たり・コンベア角度で粉砕率が激変。**“葉が泣く音”**がしたら刃圧高すぎ

  • ロス対策:コンテナの通気・保冷。摘み置き加熱を防ぐため、30分以内搬入を厳守


4|製茶(蒸し・粗揉・中揉・精揉・乾燥):蒸しで7割決まる!️

  • 蒸し:浅蒸し(香り立ち&透明感)/深蒸し(濃度&まろみ)。芽の硬さ×葉厚×葉温で秒数を微調整。蒸しすぎは青臭消失&粉増、不足は渋味尖り

  • 粗揉:揉みこみは細胞をほぐし水分均一化。風量と温度で乾燥速度の曲線を描くイメージ。

  • 中揉:線条を整え、過乾燥を避けて内部水分を中心へ移動

  • 精揉:光沢を出し、形を締める。ここでの手離れ感は香味安定のサイン✨

  • 乾燥:水分4〜5%目標。水分計の校正を月1回。乾きムラは火香の付き方を不安定に。

センサー活用:排気湿度・排気温のログ化で、蒸しから乾燥までの“香味カーブ”を見える化


5|荒茶から仕上げへ:ふるい・火入れ・合組の“設計”

  • 篩い分け:針状・粉・茎などパーツごとに。欠点除去=味の解像度UP

  • 火入れ(焙煎):低温長時間→甘香(あまか)、高温短時間→香ばしさ。二段火で奥行きを作る。

  • 合組(ブレンド):畑違い・ロット違いを狙いの味に寄せる職人技。味覚ボキャブラリー(旨味・渋味・滋味・火香・青香)をチームで共通化️


6|“欠点”は早く見つけて“資産”に変える

  • 青臭の過剰:蒸し不足→蒸し秒+5〜10/眠り葉混入→選葉強化

  • 渋味尖り:摘採遅れ/高温乾燥→火入れ温度↓+時間↑

  • にごり出汁:粉の混入→ふるい強化/深蒸し過多→蒸し温度見直し

  • 吸湿臭:保管温湿度×包装。脱酸素・低温倉庫で鮮度キープ❄️


7|おいしさを“言語化”する:抽出条件×TPOの提案 ☕️

  • 煎茶:70℃・1分→甘旨、85℃・30秒→香強。二煎目の最適化も提案。

  • 玉露:50℃・2分で旨味の海。

  • ほうじ茶:95℃・30秒、ミルク割りのレシピカードを同梱

  • 水出し:冷蔵3〜4時間。カフェイン控えめ訴求で夏の主役


8|DXで“勘+データ”のハイブリッドへ

  • 生育モニタ:葉温・土壌水分・日射量をクラウドで。

  • CO₂見える化:ボイラ燃料・電力使用量を製品当たりで表示→環境値をブランドに。

  • トレーサビリティQR:畑・品種・蒸し秒・火入れ温度を開示=信頼の源泉


9|販売の“勝ち筋”:体験をセットで売る

  • 季節便(新茶・夏の水出し・秋の焙じ・冬の玄米茶)

  • ペアリング提案(和菓子・チーズ・チョコ)

  • ティーバッグは“美味しい”を証明:ドリップ式や三角メッシュで抽出性↑

  • SNS蒸気の立つ動画茶葉の手触り湯呑みの音——五感を伝える


10|まとめ

お茶は畑→工程→言葉→体験の総合芸術。畑で整え、工程で磨き、言葉で届け、体験で定着させる。今日からできる一歩は、蒸し〜乾燥の排気ログをとって“自園の香味カーブ”をつくること。来年の新茶、きっと別格になりますよ。✨