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月別アーカイブ: 2025年10月

山佐園の茶話~part23~

皆さんこんにちは!
有限会社お茶の山佐園の更新担当の中西です!

 

 

山佐園の茶話~part23~

 

茶樹の声に耳を澄まし、天気と対話し、工程を科学する。そんな“丁寧な当たり前”の積み重ねが、湯飲み一杯の感動に変わります。今日は、圃場管理→摘採→製茶→仕上げ→販売まで、一気通貫の“勝ち筋”を解説します。✨


1|圃場の設計は味を決める「最初のブレンド」️️

  • 園地の向き(アスペクト):東向きは朝露が早く乾き病気リスク低減。北風の当たり具合で芽伸びが変わる。

  • 土作り:pH5.0〜5.6目安。**完熟堆肥+有機質(菜種粕・魚粉)**で団粒構造を育て、**根の“呼吸”**を守る。EC(電気伝導度)で施肥過多を見える化

  • 品種設計:早生(やぶきた)×中生(おくみどり)×晩生(さえあかり)でリスクと収穫負荷を分散。被覆適性萎凋向きもあらかじめ想定。

  • かん水・排水:極端な乾燥は旨味(アミノ酸)↓、過湿は根痛み→黄化。点滴チューブ+土壌水分センサーで「与えすぎない勇気」

ミニTIP:苗の定植は南北畝で光を均等に。終日西日の強い畝は被覆ネットで葉温を抑え、渋みの暴発を防ぐ️


2|冬〜早春の仕込み:剪定・整枝・被覆で“芽のリズム”を整える ✂️

  • 剪定:深刈りは更新、浅刈りは収量維持。2〜3年の設計でローテーション。

  • 整枝:摘採面をフラットに保つ=均一蒸しの土台。波打ちは粉砕・粉がれの原因。

  • 被覆(玉露・かぶせ茶):遮光率・期間で旨味の伸びが変わる。直掛け→本簾へ段階的に。葉色・香の“変調”を観察


3|摘採:風味のゴールは畑で決まる ✨

  • 基準:一芯二葉(早取りは旨味↑・香り繊細/遅取りは香り濃いが渋味↑)。

  • 時間帯朝露が切れてから。露付きは蒸しムラ&粉砕の元。

  • 機械設定:回転数・刃当たり・コンベア角度で粉砕率が激変。**“葉が泣く音”**がしたら刃圧高すぎ

  • ロス対策:コンテナの通気・保冷。摘み置き加熱を防ぐため、30分以内搬入を厳守


4|製茶(蒸し・粗揉・中揉・精揉・乾燥):蒸しで7割決まる!️

  • 蒸し:浅蒸し(香り立ち&透明感)/深蒸し(濃度&まろみ)。芽の硬さ×葉厚×葉温で秒数を微調整。蒸しすぎは青臭消失&粉増、不足は渋味尖り

  • 粗揉:揉みこみは細胞をほぐし水分均一化。風量と温度で乾燥速度の曲線を描くイメージ。

  • 中揉:線条を整え、過乾燥を避けて内部水分を中心へ移動

  • 精揉:光沢を出し、形を締める。ここでの手離れ感は香味安定のサイン✨

  • 乾燥:水分4〜5%目標。水分計の校正を月1回。乾きムラは火香の付き方を不安定に。

センサー活用:排気湿度・排気温のログ化で、蒸しから乾燥までの“香味カーブ”を見える化


5|荒茶から仕上げへ:ふるい・火入れ・合組の“設計”

  • 篩い分け:針状・粉・茎などパーツごとに。欠点除去=味の解像度UP

  • 火入れ(焙煎):低温長時間→甘香(あまか)、高温短時間→香ばしさ。二段火で奥行きを作る。

  • 合組(ブレンド):畑違い・ロット違いを狙いの味に寄せる職人技。味覚ボキャブラリー(旨味・渋味・滋味・火香・青香)をチームで共通化️


6|“欠点”は早く見つけて“資産”に変える

  • 青臭の過剰:蒸し不足→蒸し秒+5〜10/眠り葉混入→選葉強化

  • 渋味尖り:摘採遅れ/高温乾燥→火入れ温度↓+時間↑

  • にごり出汁:粉の混入→ふるい強化/深蒸し過多→蒸し温度見直し

  • 吸湿臭:保管温湿度×包装。脱酸素・低温倉庫で鮮度キープ❄️


7|おいしさを“言語化”する:抽出条件×TPOの提案 ☕️

  • 煎茶:70℃・1分→甘旨、85℃・30秒→香強。二煎目の最適化も提案。

  • 玉露:50℃・2分で旨味の海。

  • ほうじ茶:95℃・30秒、ミルク割りのレシピカードを同梱

  • 水出し:冷蔵3〜4時間。カフェイン控えめ訴求で夏の主役


8|DXで“勘+データ”のハイブリッドへ

  • 生育モニタ:葉温・土壌水分・日射量をクラウドで。

  • CO₂見える化:ボイラ燃料・電力使用量を製品当たりで表示→環境値をブランドに。

  • トレーサビリティQR:畑・品種・蒸し秒・火入れ温度を開示=信頼の源泉


9|販売の“勝ち筋”:体験をセットで売る

  • 季節便(新茶・夏の水出し・秋の焙じ・冬の玄米茶)

  • ペアリング提案(和菓子・チーズ・チョコ)

  • ティーバッグは“美味しい”を証明:ドリップ式や三角メッシュで抽出性↑

  • SNS蒸気の立つ動画茶葉の手触り湯呑みの音——五感を伝える


10|まとめ

お茶は畑→工程→言葉→体験の総合芸術。畑で整え、工程で磨き、言葉で届け、体験で定着させる。今日からできる一歩は、蒸し〜乾燥の排気ログをとって“自園の香味カーブ”をつくること。来年の新茶、きっと別格になりますよ。✨