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日別アーカイブ: 2025年4月21日

山佐園の茶話~part12~

皆さんこんにちは!
有限会社お茶の山佐園の更新担当の中西です!

 

 

山佐園の茶話~part12~

ということで、お茶農家が行う茶畑育成の一年と技術について、初心者にも分かりやすく、かつ専門性を持って深く解説します。

 

日本茶の味と香り、その背後には「茶畑」という舞台があり、そしてそれを支えるお茶農家の緻密な育成作業があります。
一芯二葉(いっしんによう)この言葉は、最も美味しい新芽の摘み方を示す茶業の専門用語であり、お茶づくりの象徴とも言える言葉です。

茶畑の管理は、一年を通じて行う“総合技術”です。単に苗を植え、収穫するだけではなく、土壌、気候、病害虫、光、風――あらゆる自然の要素を読み解き、共に歩む農業。


🌱 1. 茶畑の基礎と品種選び

◯ 土地の選定と茶畑の造成

お茶は水はけが良く、酸性土壌を好む作物。標高や日照、傾斜の条件も茶園づくりに影響します。

  • 理想pH:4.5~5.5

  • 標高:200〜600mが香りの良い茶を作る傾向

  • 傾斜地は寒暖差が大きく、旨味成分(テアニン)を高めやすい

茶畑は「棚式」「畝立て式」「平坦地式」など地形に応じた方式で造成されます。

◯ 品種選びの考え方

日本には100種以上の茶品種がありますが、代表的なのは以下の通り

品種 特徴
やぶきた 全国の約7割、バランス型
さえみどり 鮮やかな緑、旨味が強く高級茶向け
あさつゆ 玉露風のまろやかさ、被覆栽培に最適

→ 土地の気候、収穫時期の分散、加工目的によって複数品種を組み合わせるのが一般的です。


🍃 2. 年間スケジュールで見る茶畑育成

茶畑管理は、1年中休むことのない仕事です。

🔸 秋(9月~11月):整枝と冬越し準備

  • 深刈り・中刈り・浅刈り:樹高を調整し、新芽の発育を整える

  • 病気や害虫の越冬を防ぐための除草と掃除

  • 土壌改良(苦土石灰、堆肥、緑肥のすき込み)

🔸 冬(12月~2月):施肥と剪定

  • 根に働きかける基肥(元肥)の投入

  • 茶の木のエネルギーを蓄えるための寒肥

  • 雪や霜の被害を防ぐための風よけネットの設置

🔸 春(3月~5月):新芽管理と1番茶(新茶)収穫

  • 萌芽(ほうが)開始を確認し、被覆栽培(かぶせ茶)など品質向上技術を施す

  • 害虫対策(チャノキイロアザミウマ、チャノホコリダニ)

  • 一芯二葉の若芽を手摘み or 機械摘み

🔸 夏(6月~8月):2番茶・3番茶と防除

  • 2番茶の収穫(1番茶より品質は下がるが量産型)

  • 高温多湿での病気(炭そ病、赤焼病)対策

  • 雑草管理と枝葉の切り戻し(通気性と採光確保)


💧 3. 肥料設計と土づくり:茶の味は土が決める

◯ 肥料の基本設計

お茶は、他作物よりも窒素要求量が高く、これが旨味や香りに直結します。

タイプ 目的 備考
基肥(元肥) 春先の萌芽を支える 有機+化成の併用が多い
追肥 生育の途中で施す 被覆栽培時には特に重要
寒肥 冬に根を育てる 骨粉や油かす、堆肥が中心

◯ 土壌分析による可視化管理

  • pH・EC値・窒素、リン酸、カリウムなどのバランスを年1回以上分析

  • 足りない成分だけを的確に補う「精密施肥」


🐛 4. 病害虫・気象リスクへの対策

◯ 主要な病害虫

  • チャノホコリダニ:新芽を変形させる

  • チャノキイロアザミウマ:若葉の表面を食害

  • 赤焼病・炭そ病:葉が茶色く枯れる

→ 生物農薬・BT剤・フェロモントラップ・天敵利用など、減農薬型のIPM(総合防除)が注目されています。

◯ 気象リスク

  • 遅霜:新芽の全滅リスク(送風機や防霜ファンを使用)

  • 台風:棚式茶園の倒壊対策が必須

  • 高温障害:夏場の根焼けや日焼けを防ぐ「マルチ被覆」


📈 5. 技術の進化とスマート農業の活用

◯ ICT・IoTの活用事例

  • 土壌水分センサー+スマホ連携 → 水管理の省力化

  • ドローンによる空撮モニタリング → 病害の早期発見

  • 茶葉生育AI診断 → 摘採タイミングの見極め

また、スマートファーム化により、高齢農家の負担軽減や若手参入の促進も期待されています。


✅ 茶畑育成は「技術 × 感性 × 継承」の農業

お茶農家による茶畑育成は、
技術(栽培管理)
× 感性(季節の読みと自然との対話)
× 継承(地域の文化と知恵)

この三位一体で成り立っています。

特に気候変動や市場変化が激しい今、土づくりと丁寧な育成こそが、茶の品質と農家の持続可能性を支える基盤です。